処理水巡り内堀知事「次の取り組み大切」 国内外へ情報正確に

 
エフレイの設立について「本県の強みを生かしてネットワークの形成を進めたい」と語る内堀知事

 政府が「春から夏ごろ」と見込む東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出を巡り、内堀雅雄知事は、国内外で理解を深めるために「次にどういう取り組みを講じていくのかが大切だ」と述べ、理解醸成が十分に進んでいない現状を踏まえた対応を政府と東電に求めていく考えを示した。東日本大震災と原発事故から丸12年となるのを前に6日、福島民友新聞社の取材に答えた。

 内堀知事は理解醸成に向けた政府の取り組みについて「伝えるよう努力している」としたが、さまざまな調査結果から根強い不安が残っているとして「政府、東電は(調査結果を)真摯(しんし)に受け止めることが重要」と指摘、さらなる取り組みの必要性を示唆した。その上で国際原子力機関(IAEA)など第三者機関も活用して情報を国内外に正確に伝えていく重要性を訴えた。

 復興・創生を巡っては、新型コロナウイルス感染拡大が始まってからの3年間、JR常磐線の全線再開通や東京五輪の開催など前進があった一方、式典の縮小や無観客試合などの対応を取らざるを得なかったとして「復興の進捗(しんちょく)を県民が実感できる機会がかなり失われた」と強調。「失われた3年間を挽回するために取り組みを深め、復興を実感できるようにすることが大事な仕事だ」と述べた。

 福島を「希望の地」へ 内堀知事インタビュー

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から丸12年を迎えるのを前に、内堀雅雄知事は6日の福島民友新聞社のインタビューで、4月に浪江町に設立される福島国際研究教育機構(F―REI=エフレイ)について「県内には連携できる大学や研究機関が集まっている。本県の強みを生かしてネットワークの形成を進めていきたい」と述べ、波及効果の創出に力を入れる考えを示した。(聞き手 編集局長・小野広司)

 ―震災、原発事故から12年。本県の復興の進捗(しんちょく)状況をどう捉えているか。
 「昨年は帰還困難区域で初となる避難指示解除が実現し、全町避難が続いていた双葉町でも一部で避難指示が解除されるなど、新たな段階に向けた大きな一歩を踏み出した。一方で、長く厳しい闘いは続く。共感、協働の輪を広げながら全力で復興に取り組んでいく」

 ―新型コロナウイルス禍の影響か、復興関連の指標のいくつかで数値が低下している。どう見るか。
 「この3年は『失われた3年』といえる。JR常磐線全線再開通の式典はできず、東京五輪の聖火リレーの出発式や野球、ソフトボール競技は無観客だった。コミュニティーの濃密さも壊され、県民は閉塞(へいそく)感を感じている。失われた3年の挽回に取り組み、復興を実感してもらえるよう努力していく」

 ―政府が「今年春から夏ごろ」と見込む処理水の海洋放出が迫る。県としてどのような対応を求めていくのか。
 「国に対して関係者への丁寧な説明、情報発信の充実強化、万全な風評対策に責任を持って取り組むことを強く求めてきた。事業者が将来に向けて安心して事業を継続していくため、断固とした決意の下で、政府が最後まで責任を全うするよう、あらゆる機会を通じて求めていく」

 ―各種調査では県民、国民の理解が醸成されているとはいえない状況だが、どのように考えているか。
 「今はまさに途上であり、さまざまな調査結果については当然ながら政府、東電が真摯(しんし)に受け止めることが重要だ。その上で、県民や国民の理解をより深めるために、次にどういう取り組みを講じていくのかが大切。政府、東電自身が努力することは当然だが、国際原子力機関(IAEA)など第三者機関も活用しながら、理解をどう深めていくのか県として訴えていく」

 ―帰還困難区域の住民帰還の加速へ政府にどのような対応を求めていくか。
 「政府が今国会で法整備を目指している特定帰還居住区域は、帰還困難区域全体の避難指示解除に向けた大切な一歩になる。帰還意向のある住民が安心して古里での生活を再建するためには、早期の除染などに取り組むことが必要だ。また帰還意向がない住民の土地、家屋の取り扱いなど課題も残る。国には責任を持った取り組みと、課題解決に向けた予算確保を求めていく」

 ―浪江町に設立されるエフレイへの期待は大きい。県としての取り組みは。
 「県内にはエフレイと連携できる大学、研究機関、企業などが既に多く集まっており、関連の研究や事業は先行している。産業支援の取り組みでも緊密な連携が可能だ。出前講座や体験講座など教育面での連携も重要で、本県の強みを生かして多様な主体を結ぶネットワークの形成を進め、地域との結び付きを強めていきたい」

 ―2025年度までの第2期復興・創生期間後の道筋を県民にどう示すのか。
 「総合計画に掲げている『ひと』『暮らし』『しごと』の三つの視点で取り組みを進めていく。福島の定義を『希望の地』『復興の地』へと変えていくためには『チャレンジ県ふくしま』であることが重要。課題、困難を解決するためには多くの県民の皆さんと一緒に挑戦するしかない。私自身が一番汗をかき、努力をしながら頑張っていく」