「皆で語れる場所」願い実現 複合施設「さくらの里双葉」オープン

 
(写真上)サウナや水風呂も整備した「双葉の湯」(写真下)食事を楽しみながら旧交を温めた交流会の参加者ら

 福島県双葉町中野地区の復興産業拠点に12日、温浴と飲食、宿泊の機能を完備した複合施設「さくらの里双葉」がオープンした。町によると、町内に温浴を楽しみ、夜に飲食を伴う会合を開くことができる場ができたのは東日本大震災後初めてで、双葉町の復興が一歩前に進むことが期待される。11日夜はオープンを記念した交流会が開かれ、町民が古里で杯を傾けながら旧交を温める姿があった。

 施設を運営するのは、2021年に中野地区で「ビジネスホテルARM(アルム)双葉」を開業し、双葉町の再生を宿泊面で支えてきたアルムシステム(北海道帯広市)。さくらの里を開設するきっかけは、同社の清信祐司社長が一時帰宅などのためホテルに宿泊した双葉町民らと交流する中、「みんなで語れるような場所がない」との声を聞いたことだった。

 さくらの里は、木造2階建ての宿泊棟と、温浴・飲食棟で構成され、ホテルの西側に整備した。宿泊施設「さくらの宿・英」はツインとダブルの計28室。温浴・飲食施設は、1階が温浴施設「双葉の湯・祐」でゆったりとできる浴槽に加え、サウナと水風呂を整備した。2階の飲食施設「食事処・貞」では、昼と夜のメニューをそろえ、アルム社のネットワークを生かした札幌みそラーメンやジンギスカンなど北海道の味を楽しむことができる。

 11日夜の交流会には、双葉に帰還した住民や、避難先から双葉を思う町民らを招待した。いわき市から参加した石井みゆきさん(85)は「来年には双葉に戻ってこようと考えていた。このような施設があれば安心です。うれしい」と語り、仲間と心和むひとときを過ごしていた。同社によると、すでに会合の申し込みが相次いでおり、観光や視察などで双葉を訪れる団体、個人の需要にも応えたい考えだ。

 場所は双葉町中野字堂ノ前27。温浴施設の本格営業開始は13日から。問い合わせはビジネスホテルARM双葉(電話0240・23・6040)へ。

 宿泊1泊9000円から日帰り入浴は700円

 さくらの宿・英の宿泊料金はシングル1泊9000円から。双葉の湯・祐は日帰り入浴料が700円(小学生以下は350円)で、営業時間は午後1~8時半。食事処・貞の営業時間は午前11時~午後8時。

さくらの里双葉の地図