川内の震災、証言で残す 村が記録集作製「村民の内面伝わる内容」

 
記録集を手に「震災の記憶を引き継いでいきたい」と語る遠藤村長

 川内村は、新たに震災記録集「川内のかたりべ」を作製した。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの村の復興を巡っては、時系列的に出来事をたどる記録誌はあったが、今回は関係者へのインタビューを中心に構成して地域再生への思いなどをまとめた。遠藤雄幸村長は「震災から時間が経過する中で、記憶を確かに後世につなげていきたい」としている。

 村は震災から10年を契機に「川内のかたりべ」の作製を進めてきた。新型コロナウイルス感染拡大などの影響もあったが、インタビューを重ねて刊行にこぎ着けた。記録集は「はじめに」として遠藤村長による全村避難の経緯などの証言から入り、全4章で構成される。

 章ごとに関係者の証言が掲載されている。「震災発生」の章は、村幹部の取り組みや避難所に物資を供給した村内事業者の対応を記した。「全村避難」の章では、郡山市のビッグパレットふくしまの当時の館長だった渡辺日出夫さんの証言を記載。渡辺さんは独自の判断で縁があった川内村と富岡町からの避難者を施設に受け入れたことや、避難所としてどのように運営していたのかを語っている。

 「帰村宣言」の章では、遠藤村長の帰村宣言を受けて古里への帰還を決断した村民らの思いがつづられている。村に移り住み、村民の放射線への不安などに対応した長崎大の折田真紀子さんのインタビューも含まれる。「復興」の章では、今後の発展を担う若手村民の思いなどを記録した。

 遠藤村長は「時間はあらゆるものを過去に追いやるが、震災の記憶や教訓は忘れてならないものだ。村民が避難先での生活をどのように感じていたかなどの内面が伝わる内容になった」と述べた。遠藤村長は原発事故で避難指示が出た12市町村で唯一、当時から首長を続けており「私たちが進めてきた復興を後世の人に検証、評価してもらう材料になれば」とも語った。「川内のかたりべ」は村内の各世帯に配布されるほか、関係機関に寄贈される。