新社殿で20年ぶり神楽 双葉の新山・秋葉神社、心のよりどころに

 
新社殿の完成を祝い行われた新山芸能保存会の神楽

 福島県双葉町の新山神社・秋葉神社の新社殿の竣工(しゅんこう)式は18日、同神社で行われ、住民の絆をつなぐ新たな拠点の完成を祝った。約20年ぶりに神社の境内で新山芸能保存会の神楽も奉納され、東京電力福島第1原発事故による全町避難の解消から1年が経過した双葉町内に笛と太鼓の音色が響いた。

 新山神社・秋葉神社の社殿はかつて、双葉町内を見下ろす丘の山頂にあり、参道の階段は100段を超えていたという。しかし、1954年に火災で焼失した後、社殿は少し下の場所で再建され、旧社殿の場所は公園となっていた。その後、社殿は長く住民に親しまれてきたが、東日本大震災で損壊、原発事故による全町避難で老朽化したため、氏子らによる再建協議が始まった。

 議論の結果、火災で焼失したかつての社殿の場所に新築することが決まり、今年3月から工事が進められていた。18日の竣工式には氏子や新山芸能保存会のメンバーらが駆け付けて、神事に参列した。

 新山芸能保存会の神楽は震災前、数年に1度の「お下がり」の神事の際に境内で奉納されていた。このため境内での神楽は、原発事故による避難を挟んで約20年ぶりとなった。保存会代表の白土直裕さん(55)は「なんとかうまくできたのではないか」と笑顔を見せた。

 震災から12年半が経過し、避難先で生活の拠点を築いている氏子も多くいる。氏子総代長の渡辺善行さん(74)は「何かあれば集まることができる場所ができた」と語り、新社殿が新山地区と下条地区の住民の心のよりどころとなることを願った。