浪江、全12地区710ヘクタール除染 特定帰還居住区域、年内申請

 

 浪江町は15日、東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域に設ける「特定帰還居住区域」の復興再生計画案をまとめた。区域は帰還困難区域に宅地が残る全12地区に設け、面積は計約710ヘクタール。町は県の同意を得た上で年内に国に計画案を申請する。計画は年明けに策定される見通しで、来年度から除染が始まる予定だ。町域の8割を占める帰還困難区域の再生が新たに進むことになる。

 15日、町役場で記者会見した吉田栄光町長は「対象となる全ての町民の意向を反映させた。東日本大震災から12年が過ぎたが、浪江の復興は確実に前へ進んでいく」と述べた。

 区域が設けられたのはいずれも大字の地区で井手、小丸、大堀、酒井、室原、羽附、津島、下津島、南津島、赤宇木、川房、昼曽根の計12地区の各一部。帰還を希望する256世帯の宅地を中心とした生活圏を範囲にした。復興拠点や周辺市町村などにアクセスするために必要な道路、インフラ復旧・整備に必要な施設なども含めた。町は区域の策定に向け、行政区別の意見交換会、対象町民への帰還意向調査を実施。11月には県内で12回の住民説明会を開き、計235世帯305人が参加した。町が8月までに行った帰還意向調査では対象の757世帯のうち「帰還希望あり」と答えたのは3割に当たる231世帯だった。今回の区域には231世帯に加え、説明会などを通じて新たに帰還を希望した25世帯も盛り込んだ。

 町は来年度以降も帰還意向調査を継続し、区域の拡大を進める方針。ただ、今回の区域には宅地から離れた山林などは含まれておらず、吉田町長は「いわゆる『残された課題』について早急に方針を示すよう国に求めていく」とした。

 特定帰還居住区域を巡っては、政府が大熊、双葉両町で20日から先行的に除染を始める予定だ。浪江町の計画が策定されれば同区域の適用は3例目となる。