帰還や復興進展「人口増」8市町村 避難12市町村19~22年推計

 

 東京電力福島第1原発事故で避難指示が出るなどした12市町村の人口を携帯電話の運用データを用いて推計した結果、2019~22年の4年間で増加したのは8市町村で、4市町村で減少したことが、福島医大などの研究チームの調査で分かった。研究チームは、震災から13年を迎えようとする中、帰還者の増加や復興関連企業の撤退など人口増減の要因が複雑に絡み合っていると分析、被災地域の都市計画や医療需要を検討する上で重要なデータになるとしている。

 同大放射線健康管理学講座の阿部暁樹(としき)研究員(26)らが調査した。ドコモ・インサイトマーケティングが提供する人口統計情報「モバイル空間統計」を活用し、1時間ごとに更新される特定エリアの人口を基に推計。年齢層や滞在理由などから人口動態を五つのグループに分けた分析も行った。

 人口が増加したのは南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、浪江町、飯舘村で、帰還者や定住人口の増加が主な要因と推定。楢葉町の増加率が最も高く、昼間は町外で勤務し、夜に自宅に帰宅するような人口が増えたと分析した。一方、人口が減少した田村市、川俣町、双葉町、葛尾村のうち田村市以外の3町村では、学生の卒業や就職、高齢者の減少、復興関連企業の撤退などが考えられるとした。

 また川俣、楢葉、富岡、大熊の4町では、定住しながら町外に通勤しているとみられるグループが増加した。特に避難が長期化した大熊町では、避難先での仕事や生活のつながりを維持したまま大熊町に転居する人が多いと分析。葛尾村、大熊町、双葉町では復興関連で外部から通勤する就労者が多いとみられ、双葉町、葛尾村など居住人口が少ない地域では、22年に観光客や外部からの来訪者とみられる増加があり、外部コミュニティーとの交流が進展している可能性を示唆した。

 研究チームは、復興の進展とともに地域の実情が変化する環境で滞在人口の属性を把握した貴重なデータとして、12市町村などで共有し、今後の復興計画に役立てる方針。阿部氏は「多様な人口属性を初めて数値化できたことは意義深い。このデータを活用し、復興につながる方法を模索していきたい」としている。