紡ぐ、いつまでも 東日本大震災13年、中学生「未来への手紙」
本県に未曽有の被害をもたらした東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から、11日で13年を迎えた。節目に合わせて発信された内堀雅雄知事のメッセージには、県内の中学生3人がつづった「未来への手紙」の一部が盛り込まれた。当時の記憶がなくとも、語り継ぐ―。「3・11」を経験した県民の思いは、次世代に確実に受け継がれている。
被災の怖さを
「津波で街ごと流された地域を見て、言葉を失った」。家族旅行で昨夏、双葉郡を訪れた白河二中の鈴木凜さん(2年)は、改めて震災の悲惨さを胸に刻んだ。加えて原発事故の影響でいまだ住民の帰還が進まない状況に「復興の遠さを痛感した」という。
同じ白河二中の小針萌詩(める)さん(3年)も小学校低学年の頃、浜通りに足を運び、津波の被災地を目の当たりにした。震災当時、大地震の揺れから兄に守ってもらったことを、幼いながらに覚えていた。かすかな記憶が、被災地の姿とつながった気がした。
「あの日の出来事を伝えたい」。2人が未来への手紙でつづったのは、震災、原発事故の教訓を共有することの大切さだった。震災では、浜通りばかりでなく、2人の地元白河市でも、葉ノ木平地区の土砂崩れで13人が犠牲になった。当時の記憶はほとんどないが「葉ノ木平地区の住民が亡くなった話は、家族から教えてもらった」と小針さん。直接覚えてはいなくても、2人にとって「3・11」は身近だった。
「大人になると行動範囲が広がる。震災を自分の口から伝え、多くの人に記憶を紡いでいく」と小針さん。鈴木さんは「時が止まった地域がある。被害の大きさを共有したい」と話す。震災から13年、多くを学んだ2人は、未来の復興に向け歩みを進める。(小山璃子)
日常の輝きを
「一分一秒を大切にしたい」。家族から震災の話を聞き、日常のありがたさに気付いた原町一中の鈴木真日瑠(まひる)さん(2年)は、所属するマーチングバンドの活動で思いを発信している。「今一緒にいる人があしたも一緒にいられるか分からない。家族や友達とこれからも仲良くしたい」。未来への手紙には、そんな思いを込めた。
震災発生時、1歳だった鈴木さんに当時の記憶はない。栃木県や会津若松市などで2年間避難生活を送り、南相馬市に戻ったと家族から聞いた。小学生になり、母から当時の悲惨な状況を聞いたほか、姉からは「昨日まで遊んでいた友達の家は津波で流され、みんなと別れた。避難所で生活するのはつらい」と教えられた。
「信じられない。震災をいろんな人に伝えないといけない」。震災を伝えるマーチングバンドの活動「福島のいま報告会」では、震災を直接知らなくとも、当時の状況やこれまでの復興の歩みを自ら調べ、発信している。
鈴木さんは将来、医薬品の開発に携わりたいと夢を抱く。「震災を知り、誰かを失うことへの悲しさを感じた。薬を開発してどこかで人を救いたい」(佐藤健太)
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