「あの日」語り継ぐ 俳優・富田望生さん、横田龍儀さんが決意
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の記憶と教訓を未来へ語り継いでいく―。県は11日、双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で「3・11メモリアルイベント」を開いた。ともに俳優の富田望生(みう)さん(24)=いわき市出身=と横田龍儀さん(29)=川内村出身=がトークセッションに臨み、自らの被災体験と伝承への決意を語った。
多くの人に発信したい
「地元の皆さんに『福島の誇り』と言ってもらえるような俳優になりたい」。小学5年生の時に被災し、避難先の東京で俳優への道を切り開いた富田さんは、今後の夢を語った。
富田さんは避難後、大好きだったピアノを弾く環境がなくなり「ピアノの先生になる」という幼い頃からの夢は遠ざかった。転校先の東京の学校にもなじめずにいた時、目に入ったのが俳優養成所の広告だった。「俳優になってテレビに出たら、友達が見るかもしれない」。オーディションに合格すると、週1回のレッスンが心の支えとなった。
2015年に映画「ソロモンの偽証」でデビューし、現在はNHK朝ドラ「ブギウギ」に出演中。震災の経験を語る機会も増え「(俳優という)伝えられる立場を生かして一人でも多くの人に福島のことを発信していきたい」と意欲を見せる。
阪神大震災から30年となる来年1月公開予定の映画「港に灯がともる」では、初の主演を務める。演じるのは震災1カ月後に生まれた女性。「役を通して、今も震災と向き合い続けている人がいることを伝えたい」。震災の記憶を風化させないため、スクリーン越しに思いを伝えていく。
避難...人の温かさ感じた
横田さんは震災当時、高校1年生だった。自宅で激震に耐えながら「死にたくない」と考えた。父とは中学時代からあまり口を利いていなかったが、互いの身を案じる中で自然と対話していた。
間もなく原発事故が発生し、神奈川県に避難することになった。1台の車に家族全員が乗ることはできない。祖父母は「将来のある人が行きなさい」と言って残った。つらかった気持ちを覚えている。震災は、家族の絆を強く意識させる体験となった。避難先では人の温かさも感じた。
被災者を慰問する芸能人が、一言で多くの人を元気にする姿を見て、芸能の道に入った。「人の心を動かす俳優になりたい」と舞台などの出演に汗を流す。
「震災は忘れてはいけないし、忘れられない。だけど、悪いことだけではなかったはず。自分なりに伝えていきたい」。震災の経験を力に、存在感のある演技を続けていく。
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