「オオカミが来た朝」 家族思う子どもの物語

 
福音館書店 1760円

 1935年、オーストラリア。14歳(さい)の少年ケニーは突然(とつぜん)父親を亡(な)くし、遠く離(はな)れた町まで仕事を探(さが)しに行くことになりました。大恐慌(だいきょうこう)で景気が悪い上、内気で話すことが苦手なケニーは不安で仕方がありません。

 寒い冬の朝、自転車で出かけるケニーに、近くで怖(こわ)い事件(じけん)が起きているから寄(よ)り道しないよう、母親は言い聞かせます。しかし寒さに我慢(がまん)できなくなったケニーは、道をそれて焚(た)き火に近づいてしまい...(表題作の『オオカミが来た朝』)。

 ケニーの一家4世代を短編(たんぺん)で描(えが)いた物語。表題作の後、ケニーの娘(むすめ)クライティとフランシスが、物忘(ものわす)れがひどくなった大叔母(おおおば)の言動に振(ふ)り回される『メイおばさん』、結婚(けっこん)したフランシスが、やんちゃな3歳の息子と戦争が迫(せま)るエルサレムで暮(く)らす『冬のイチジク』へと続きます。

 家族の出来事、戦争の理不尽(りふじん)さなどを子どもの視点(してん)から描いた物語。家族を思う優(やさ)しさと強さに心が温かくなる一冊(いっさつ)。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています