「ぼくたちがギュンターを殺そうとした日」  現代いじめ問題に問い

 
徳間書店 1540円

 第2次世界大戦直後のドイツ。両親と折り合いが悪い少年フレディは、小さな村のおじ夫婦(ふうふ)に預(あず)けられ、農作業を手伝いながら暮(く)らしていた。ある日、元ドイツ領(りょう)を追われ、難民(なんみん)としてギュンターが村にやってきた。

 もごもごしたしゃべり方で、いつも鼻汁(はなじる)をたらしているギュンターは、やがて村の少年たちのいじめの対象(たいしょう)になっていく。ある日、追い払(はら)ってもついてくるギュンターをフレディたちはひどくいじめてしまう。ギュンターはそのことを誰(だれ)にも言わないが、ばれることを恐(おそ)れた仲間のリーダーは口封(くちふう)じのため彼(かれ)を殺(ころ)してしまおうと言い出す。面と向かって反対できないフレディは、苦悩(くのう)する日々を送ることになる。

 フレディの心情(しんじょう)が細やかに描(えが)かれ、緊迫(きんぱく)した展開(てんかい)の本書は、作者の実体験がもとになっている。戦争による混乱(こんらん)と傷痕(きずあと)、現代(げんだい)にも通じるいじめ問題など、私(わたし)たちにさまざまな問いを投げかけてくる作品だ。中学から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています