「パラリンピックは世界をかえる」 パラスポーツ誕生秘話

 
福音館書店 2640円

 1899(明治32)年にドイツで生まれたルートヴィヒ・グットマン。この本は、神経(しんけい)外科医であり、後に「パラリンピックを生んだ人」とよばれた彼(かれ)の生涯(しょうがい)を描(えが)いた絵本です。

 ユダヤ人のグットマンは、ナチスドイツの迫害(はくがい)を受けてイギリスに亡命(ぼうめい)し、そこで下半身まひの患者(かんじゃ)の治療(ちりょう)に取り組みます。当時、脊椎(せきつい)を負傷(ふしょう)した患者の治療法は全身にギプスをするだけで、生存率(せいぞんりつ)も低く絶望(ぜつぼう)的でした。神経について独自(どくじ)の研究を重ねたグットマンは、ギプスを外して感染(かんせん)を防(ふせ)ぎ、環境(かんきょう)を改善(かいぜん)して新しい治療法を確立(かくりつ)させていきます。

 ある日、患者たちが車いすで走り回る姿(すがた)を目にし、スポーツが治療に役立つと確信します。車いすでのバスケットボールやアーチェリーは、競技(きょうぎ)会を開催(かいさい)するまでとなり、やがてパラリンピックへとつながっていくのです。

 自身の信念を貫(つらぬ)いた彼の生き方には、驚(おどろ)くことばかり。当時の写真や、愛らしい挿絵(さしえ)が分かりやすく説明してくれます。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています