「大地をうるおし平和につくした医師 中村哲物語」 アフガンに井戸、65万人救う

 
汐文社 1760円

 2019年12月、アフガニスタンで活動していた医師(いし)の中村哲(なかむら・てつ)先生が、銃撃(じゅうげき)され亡(な)くなりました。ニュースを見て、初めて中村先生を知った人も多いのではないでしょうか。

 この本では、中村先生が生きてきた道をたどります。昆虫博士(こんちゅうはかせ)に憧(あこが)れていた子ども時代、キリスト教との出合い、そして医師として登山隊に同行し訪(おとず)れたパキスタンで、医療(いりょう)を受けられない人がたくさんいることを知りました。アフガニスタンでは、戦争が40年以上続き、また干(かん)ばつによる水不足や飢(う)えで病気になる人、命を落とす子どもたちをたくさん見ました。

 中村先生は「どの場所、どの時代でも、一番大切なのは命です」と命を守るため、ある時はサンダルを作り、また自ら井戸を掘(ほ)り、用水路をつくり、65万人もの命を救(すく)いました。アフガニスタンの人が願うことは「1日3回食事ができること」「家族といっしょに暮(く)らすこと」の二つ。この願いがかなうようにと強く思わずにはいられない一冊(いっさつ)です。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています