「荒野にヒバリをさがして」 迷子の兄弟、心温まる絆

 
徳間書店 1540円

 イギリス北部で暮(く)らす少年ニッキーは、アルコール中毒(ちゅうどく)を克服(こくふく)した父と、特別支援(しえん)学校に通う兄ケニーと穏(おだ)やかに過(す)ごしていました。

 ある年の春、「ヒバリを見に行こう」とケニーをハイキングに誘(さそ)います。出発が遅(おく)れ、バスを2時間以上乗り継(つ)いで公園に着いた時には昼を過ぎ、雪も降(ふ)り始めました。寒さと、帰る時間を心配したニッキーは、遊歩道から外れた丘(おか)を登って近道しようと考えます。

 ところが、そこは雪が積もった荒野(こうや)で、2人は迷子(まいご)になってしまいます。崖(がけ)から落ちたニッキーは大けがをし、ケニーひとりで道路を探(さが)すよう説得(せっとく)します。ニッキーは寒さで凍(こご)えながら、アルコール中毒だった頃(ころ)の父さんと失踪(しっそう)した母さんのこと、泣いていたケニーのことなどが頭に浮(う)かんでくるのでした...。

 イギリスの児童文学作品に贈(おく)られる2020年カーネギー賞(しょう)受賞作。2人の行方にハラハラしながらも、互(たが)いを思う絆(きずな)が温かく胸(むね)に残ります。読後感もよくお薦(すす)めの一冊(いっさつ)。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています