「千に染める古の色」 源氏物語の着物に注目

 
アリス館 1540円

 今から千年ほど昔、平安時代の京の都。右大臣家の娘(むすめ)で、かぐや姫(ひめ)と呼(よ)ばれた13歳(さい)の千古(ちふる)姫のひと夏の物語。

 裳着(もぎ)(成人の儀式(ぎしき))を控(ひか)えて外出できず退屈(たいくつ)な思いをしていた姫が、ふとしたことから、絹糸(きぬいと)を染(そ)める染色(せんしょく)に興味(きょうみ)を持つ。

 この姫のほかの人と違(ちが)うところは悩(なや)まないで実行するところ。お付きの女童(めのわらわ)をつれ御殿(ごてん)を出て、庭を歩いて染色工房(こうぼう)を訪(たず)ねていく。

 そこで見たのは草木を煮(に)て色を出し、糸をひたし染める職人(しょくにん)の技(わざ)。「わたしもやりたい。そして、いろんな色が染められるところを直(じか)に見たい」と千古姫は強く思う。そして、「源氏(げんじ)物語」に出てくる女君(おんなぎみ)たちの着物の色のかさなりを、千古姫は再現(さいげん)しようとするのだった。

 「撫子(なでしこ)」「山吹(やまぶき)」「蘇芳(すおう)」「朽葉(くちは)」など、日本古来の色の呼び名と色づかいがたくさん描(えが)かれ、優雅(ゆうが)な古典の世界へといざなってくれる。貴族(きぞく)の姫の生活を想像(そうぞう)するのも楽しい。歴史(れきし)の扉(とびら)を開いてくれる一冊(さつ)。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています