「ひみつの犬」 事件にゆれる飼い主探し

 
岩崎書店 1650円

 小学5年生の少女羽美(うみ)は、同じマンションに越(こ)してきた4年生の細田君と友達になる。ペット禁止(きんし)のマンションで犬のトミオを飼(か)っている細田君は、誰(だれ)にも見つからないうちに新しい飼い主を探(さが)すのだと言う。

 羽美に協力を頼(たの)み、トミオを整体治療院(ちりょういん)の佐々村さんに預(あず)けようと考えた細田君。ところが、佐々村さんは怪(あや)しげな封筒(ふうとう)を近所に配るよう頼むばかりで、トミオの話は進まない。同じころ、近所で空き巣や火炎瓶(かえんびん)の投げ込(こ)み、ごみの嫌(いや)がらせなどの事件(じけん)が相次ぎ、羽美の興味(きょうみ)は犯人(はんにん)探しへと移(うつ)っていく...。

 佐々村さんを信じたい細田君と、不信感を抱(いだ)く羽美。"大人の言葉には本当とうそが混(ま)ざっている"という羽美は、折に触(ふ)れドキリとするような言葉をつぶやく。一方、犯人探しに夢中(むちゅう)になる羽美に"正しいことが人を傷(きず)つけることもある"という姉の言葉も心に残る。

 さまざまなことを考えさせてくれる、子どもと関わる大人にも読んでほしい高学年向けの一冊(さつ)。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています