「ノクツドウライオウ」 将来は靴職人?悩む中2

 
あすなろ書房 1650円

 私(わたし)は木村夏希(なつき)、中学2年生。私の家は高いビルの間にちょこんと立つ小さな建物で、100年続くオーダーメイドの店「靴(くつ)の往来堂(おうらいどう)」。

 4代目で頑固(がんこ)な靴職人(くつしょくにん)のおじいちゃんは、マエストロといわないと返事をしない。5代目になる予定だったお兄ちゃんが家を出て行ってから、私は家族の期待を感じている。将来(しょうらい)の仕事は未定、でも靴のデザイナーに憧(あこが)れ、靴作りの修業(しゅぎょう)を始めたばかり。土地を買いたいと店にしょっちゅう来る不動産屋さんが、しぶしぶ靴を注文していった。しかし、出来上がった靴を履(は)いた彼は大喜(よろこ)び、「足が痛(いた)くない!人生が変わった」という。

 自分のやりたいことがまだ分からない若者(わかもの)の悩(なや)み、4代も続く家業の将来性(しょうらいせい)への不安など迷(まよ)い考える夏希の姿(すがた)がみずみずしい。今では少ない職人の仕事と若者のやりたいことがうまく合致(がっち)したら、すばらしい世界が始まるのでは...。そんな予感に満ちた物語。不思議な題名の謎(なぞ)も分かりますよ。高学年から。(佐)

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています