「パフィン島の灯台守」 寡黙な男と少年の絆

 
評論社 1650円

 父親を亡(な)くした5歳(さい)の少年アランと母親は、大嵐(おおあらし)の夜、パフィン島沖で船から海に投げ出され、灯台守のベンに命を救(すく)われました。暗闇(くらやみ)の中、荒波(あらなみ)を越(こ)え、ベンは小さな手漕(こ)ぎボートで何往復(おうふく)もして岩場にしがみつく30人の命を救ったのでした。灯台の中には、ベンが描(か)いた船の絵がたくさん飾(かざ)られていました。寡黙(かもく)な彼(かれ)は感謝(かんしゃ)の言葉をかけられてもニコリともせず、ひたすら暖炉(だんろ)を温め、皆(みんな)に毛布(もうふ)と温かい紅茶(こうちゃ)を配りました。救命艇(きゅうめいてい)で皆が島を離(はな)れる時、ベンはアランが気に入って見ていた船の絵を何も言わずに持たせてくれました。その絵は、辛(つら)く寂(さび)しい暮(く)らしが続くアランを励(はげ)まし続けました。彼は「いつかパフィン島に戻(もど)りたい」と願いながら、12年の時が過(す)ぎ...。

 アランと孤独(こどく)な灯台守の心の絆(きずな)と、一羽の鳥がもたらす奇跡(きせき)を描(えが)いた感動作。人種、戦争、命、家族、環境(かんきょう)など、時を超(こ)えて描かれる物語に心を動かされます。温かみのあるたくさんの挿絵(さしえ)も魅力(みりょく)的。高学年から大人まで。(瓶)

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています