「図書館がくれた宝物」 学童疎開、つらさ癒やす本

 
ケイト・アルバス作、櫛田理絵訳「図書館がくれた宝物」 徳間書店 2090円

 第2次世界大戦下のロンドン。親代わりだった祖母(そぼ)を亡(な)くした12歳(さい)のウィリアム、11歳のエドマンド、9歳のアンナは、学童疎開(そかい)に参加するよう弁護士(べんごし)から言われる。資産家(しさんか)だった祖母の遺産(いさん)を引き継(つ)ぐために、後見人を疎開先で探してほしいと。

 疎開先では、「疎開野郎(やろう)」といじめられたり、貧(まず)しい預(あず)け先で使用人同様の扱(あつか)いを受けたり、と散々な目に。そんな3人にとって、司書がお誂(あつら)えの本を勧(すす)めてくれる図書館が居(い)場所となっていきます。

 面倒(めんどう)見の良いウィリアム、やんちゃなエドマンド、おっとりとしたアンナをはじめ、疎開先の子どもたちが生き生きとして爽快(そうかい)。戦争を扱う物語の暗さは感じません。作中に登場する「小公女」や「ホビットの冒険(ぼうけん)」「ギリシャ神話」などの本も、巻(かん)末(まつ)で紹介(しょうかい)されていて読みたくなりますよ。図書館に限(かぎ)らず、誰(だれ)にでもつらいときの居場所があることを願います。高学年以上にお薦(すす)めです。(森)

 

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています