【清流あらかわフォーカス<1>】笑顔咲く春のひととき

 
荒川桜づつみ公園残雪の吾妻連峰を背に青く澄んだ穏やかな流れの荒川下流。荒川桜づつみ公園では市民が桜の花をめでる(ドローン撮影・石井裕貴)

 日本で最もきれいな川はどこか。国管理の河川では福島市の荒川だ。11年連続で水質日本一に輝いている。福島県の日本酒でさえ8連覇なのに、である。水質が良く自然豊かな川である一方、その名の通りの「暴れ川」で、豪雨のたびに激流が山を削り大量の土砂を流し、古くから土石流や氾濫などの被害が相次いできた、国内でも有数の急流河川としても知られる。水との闘いによって生まれた多くの土木遺産、豊かな大地に育まれた希少な生物、地域一帯で環境保全に取り組む人々の姿など、荒川のさまざまな面にフォーカスを合わせて紹介していく。

 「この川の美しさはずっと保ってもらいたい。いつ来ても良い場所です」

 残雪の見える吾妻連峰を背に、青く澄んだ穏やかな流れを見せる荒川下流。隣接する荒川桜づつみ河川公園には約1キロにわたる桜並木があり、公園や河川敷では子どもから高齢者まで幅広い年代の市民が思い思いに花見を楽しむ。

 福島市の山県輝夫さん(87)は公園を散歩コースに入れて利用する市民の一人だ。ことしの春も妻と友人で満開の桜を眺めた。水道やトイレが整備されていて、散策も快適だ。

 河川敷には車の乗り入れが可能で、バーベキューや芋煮会を楽しむこともできる。芋煮会は河川敷で鍋料理を楽しむ行事で、地域で流儀が違う。おいしそうな香りが漂い、多くの家族連れや友人らが笑顔を見せる。新型コロナウイルスの感染拡大による密集を避けようと、1人用のテントを張って過ごす利用者も見られるようになった。

 「若い頃は河川敷で友だちとバーベキューをしましたが、最近は子どもと公園でお弁当を食べたり、ゆったり遊んだりしています」。2歳の長女と一緒に訪れた福島市の馬島亜樹さん(43)は荒川と共に歩む家族の思いを話す。荒川は市民にとって安らぎの場所だ。(石井裕貴)

荒川桜づつみ河川公園の地図
 荒川 阿武隈川の支流で、奥羽山系の東吾妻山(1975メートル)、一切経山(1949メートル)などを水源とする全長29.7キロの1級河川。水源から阿武隈川までの高度差は約1500メートル。東鴉(ひがしからす)川、塩の川、須川などの支流と合流して一気に下り阿武隈川に注ぐ。流域には水林自然林、荒川桜づつみ河川公園、荒川運動公園など福島市民の憩いの場所があり、春には花見、秋には芋煮会でにぎわう。

 ※毎月1回掲載します