【建物語】いいたて村の道の駅までい館・飯舘村 復興後押し希望の光

 
ペチュニアやゼラニウムなど数種類の生花が天井からつるされ、癒やしの空間を演出している「までいホール」。花々が来館者を出迎える

 阿武隈山系北部の高原にあり、豊かな田園風景が広がる飯舘村。村内を東西に横断する県道原町川俣線を車で走ると、周囲の牧歌的な景色とは一線を画す、ひときわ目立つ建物が姿を現す。村の復興や、にぎわい創出の拠点として整備された「いいたて村の道の駅までい館」。道の駅を中心に新たな人の流れが生まれるなど、復興推進の大きな屋台骨となっている。

 村は東京電力福島第1原発事故に伴う全村避難を経て、2017(平成29)年3月末に帰還困難区域を除き避難指示が解除された。道の駅は、避難指示解除後の生活基盤の整備が求められる中、帰還した村民の生活を支える復興拠点施設として同年8月に開業した。

幻想的なホール

 館内には野菜や花、加工品を販売する直売所や、食堂のほか、生活必需品を販売するコンビニエンスストアも併設されている。栗原六太郎駅長(69)は「村内では買い物環境が十分に整っていないため、帰還した村民にとって生活に欠かせない場所となっている」と存在意義を語る。

 までい館の代名詞となりつつあるのが、館内中央に位置する交流の場「までいホール」。天井から数種類の生花がつるされ、幻想的な癒やしの空間に来館者をいざなう。最近では、このホールを目当てに訪れる人も増えているという。ガラス張りの天井から自然光が降り注ぐまでいホール周辺では日々、来館者が思い思いの時間を過ごしている。

特産の花々販売

 村の復興に不可欠な要素の一つが基幹産業である農業の発展だ。避難指示解除後、村民の多くが村内外で野菜や花の栽培を再開させている。村民が丹精した農産物が所狭しと並ぶ直売所。中でも、花は直売コーナーを美しく彩る人気商品で、栽培農家がカスミソウやスターチス、アルストロメリアといった村特産の花々を出荷、販売している。

 村在住の高橋日出夫さん(71)もその一人。帰村後に営農を再開し、妻と共に年間を通しアルストロメリアの栽培を手掛けている。高橋さんは「栽培した花などの農産物を手に取ってもらえることは、再スタートを切った生産者にとって大きな励み。までい館が村の復興の姿を発信するような場所になっていってほしい」と望む。

 道の駅北側の隣接地に昨年8月、子育て世代の定住などを目的にした多目的交流施設「ふかや風の子広場」が開業した。屋内運動施設「ひみつ基地 どきどき」や、12基の多彩な屋外大型遊具が設けられ、今では、近隣市町村からも多数の親子連れが訪れる人気スポットになっている。村の担当者は「道の駅や広場など各施設が一体となることで、交流人口の拡大につながってほしい」と期待する。

 村内の居住者は1日現在で1479人と、震災前の人口(6509人)の3割に満たない。ふるさと再生に向け、課題が山積する村の家々にともる明かりはまだ少ないが、闇夜に浮かぶ道の駅の明かりは、村の復興を後押しする希望の光のようにも見える。

 飯舘村では「丁寧な」「大切に」などという意味の方言「までい」をスローガンに村づくりが進められている。真心を込めて来館者を出迎える―。そんな思いから命名された「までい館」。阿武隈山系の高冷地で、一段と寒さが厳しい村に今年も本格的な冬が到来した。「までい」なおもてなしは、これからも訪れる人の心を温め続けるのだろう。(福田正義)

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 いいたて村の道の駅までい館 原発事故による避難指示の解除後、2017(平成29)年8月に開業した。村産の食材を使った料理を提供する食堂や、直売所が人気を集め、週末を中心に来館者でにぎわっている。営業時間は午前9時30分~午後6時(冬季は同5時まで)。定休日は水曜日と年末年始。住所は飯舘村深谷字深谷前12の1。問い合わせはまでい館(電話0244・42・1080)へ。

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NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜にコラボ企画

 建物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。