【TRY・ウェイクサーフィン(下)】「自分だけの波」楽しめた

 
何とかボードに立ち、波乗りに成功した記者

 猪苗代湖で水の中に入り、その時を待った。いよいよ「ウェイクサーフィン」に挑戦だ。ライフジャケットを着ていたが、思っていたより水の中に沈んで焦っていた。「大丈夫です。力を抜いてください」。ボートを運転する宮崎雄人さん(39)の声で正気を取り戻し、覚悟を決めた。(喜多方支社・斎藤優樹)

 「よろしくお願いいたします」。気合を入れて合図を送ると、大きな音を立ててボートが動きだした。事前に教えてもらった膝を曲げた基本姿勢。そこから、船とつながるロープで一気に引っ張られる。

 ボートがつくる引き波が押し寄せる中、足元にあるボードを体に引き寄せる。しかし、水圧がものすごい。瞬く間に失敗した。

 「くっそー! もう1回」。大きな声を出すと、水への恐怖は消え、楽しさがこみ上げてきた。繰り返すと、バランスを取るこつが分かってきた。

 3回目の挑戦で何とか立ち上がることに成功した。「やった」と思った瞬間、気が付くと、また水の中に。お手本を見せてくれた師匠とも言える喜多方市の安田実さん(46)の姿をイメージした5回目。立ち上がり、なんと波乗りに成功した。

 余裕が出てくると、大きな波に乗りたいとの欲も出てきた。澄み渡る青空と磐梯山の美しい景色の中、何とも気持ちいい。

 最終の8回目。これまでよりさらに大きなボートの引き波に近づこうとした瞬間、残念ながら転落した。最終的には完成形の「両手放し」とはいかないものの、ロープから片手だけ放す「片手持ち」までできた。運動センスに少し自信があったのだが、人生と同じで簡単にはいかないらしい。終わってボートに上がる際、想像以上に体力を消耗していることを実感した。

 「連続してできるのは15分ほど。体力的にも厳しいんだよね」。宮崎さんが教えてくれるように、難しいからこそ楽しい。水上スポーツと縁がなかった記者だが、一瞬でとりこになった。

 宮崎さんは「対策すれば水は怖くない。テレビで取り上げられて、年々愛好者が増えてきているんだよ」と話す一方で、「ライフジャケットを着たり、風が強い時に船を出さないなど。店と利用者の双方がルールやマナーを守り、水遊びを楽しんでもらえれば」と表情を引き締めた。

 "自分だけの波"を自由に楽しめるのがウェイクサーフィンの魅力の一つ。波に乗った時の高揚感は、トライが終わった今も脳裏に残っている。