【衆院選・最前線ルポ】3区/農業票の取り込み鍵、支持固めへ

 

 県南の福島3区は、自民党前職の上杉謙太郎と立憲民主党前職の玄葉光一郎が3度目の対決に挑む。岸田内閣で当選1回ながら外務政務官に就き、勢いに乗る上杉が元外相の牙城を突き破れるか。立民副代表の玄葉が地力を発揮し、10選を飾るか。中央政界にも影響が及ぶだけに、両陣営は支持拡大へ、しのぎを削る。

 緊張感漂う宣戦布告

 衆院が解散された14日。初の万歳を終えた上杉が向かった先は議員会館の玄葉の事務所だった。「三度立たせていただく」「お手柔らかに」。互いに口調こそ穏やかながら緊張感が漂う中での"宣戦布告"だった。

 実績浸透、切り崩しへ

 選挙期間中で初の週末となった23、24の両日。須賀川市の上杉の選挙事務所には30~40代の支持者が駆け付けビラを手に市街地へ散った。上杉陣営は居住地の白河市で支持固めを進める一方、玄葉が強い地盤を持つ須賀川へと攻勢をかける。選対本部幹事長の満山喜一は「若者が活動の前面に出ており、支持の裾野が広がった」と手応えを語る。

 「打倒玄葉」に向け上杉は農業票の取り込みが鍵を握るとみて災害時の農業被害対応に奔走した。しかし、県農業者政治連盟は自民前職で唯一、上杉の推薦を見送り、玄葉の推薦を維持した。上杉陣営は実績を浸透させ切り崩しを図る構えだ。23日夕、JA直売所前で演説した上杉は米価対策に万全を期すと強調した上で、外務政務官の立場から「輸出先を開拓することで農産物の需要を増やせる。中期的、長期的な政策も担わせてほしい」と訴えた。

 対抗心をむき出しに

 「縁が深い須賀川、田村で(相手候補を)圧倒するのが玄葉の勝ちパターン。大差で勝たせてください」。24日、須賀川市で開いた街頭演説会で、玄葉は対抗心をむき出しにし支持を呼び掛けた。慎重な発言で知られるだけに集まった支持者からは「意気込みが違う」と驚きの声が聞かれた。

 4年前、上杉に比例復活当選を許して以降、玄葉は支持基盤の立て直しに力を注いだ。側近も「近年ここまで地元に戻る頻度が多かったことはない」と口をそろえる。選対本部長代行の宗方保は「本人の気合が伝わり、陣営の士気は高い」と組織をフル回転させる。

 玄葉を突き動かすのは、台頭する上杉への危機感だけではない。「立民にはいろいろな問題があるが、私が取り除く。そのために力を与えてください」。演説でこう言い切った玄葉から選挙後の政局を見据えた覚悟がにじんだ。(敬称略)