処理水放出説明尽くす 東電廃炉推進カンパニー・小野最高責任者

東京電力福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は、原発事故から11年を前に福島民友新聞社のインタビューにオンラインで応じ、処理水について「設備ができたから放出というようにはならない」と述べ、説明を尽くして理解を得ていく考えを示した。(聞き手・編集局長 小野広司)
―多核種除去設備(ALPS)処理水について、政府が放出開始のめどとしている2023年春まで間もなく1年となる。関係者の理解は得られていないが、東電の評価は。
「理解という言葉は難しく、さまざまな受け止め方がある。まずは、安全な処分と風評対策に取り組んでいくことを丁寧に説明していく。スケジュールありきではなく、説明を尽くして理解してもらう努力を継続するしかない。理解を得られれば設備を運用できるようにしていかなければならないが、設備ができたから放出というようにはならない」
汚染水対策柔軟に
―そもそも汚染水の発生を抑えることが重要だが、トラブルが相次ぐ。対策を抜本的に変える考えは。
「サブドレンと呼ばれる井戸から地下水をくみ上げたり、凍土遮水壁で汚染水の発生を抑えたりする対策が重層的に効果を発揮していると認識している。当面はいかに保守するかがポイントだ。一方、20年、30年使い続けるかどうかに関しては固執する必要はない。もっといい方法があれば、柔軟に検討していくことが重要だ」
―作業員の被ばく量を「個人情報」を理由に公開しないとしたが、情報開示に後ろ向きでは処理水への理解を得る流れに逆行していないか。
「基本的に線量については全て出すべきだと考えている。ただ、本人が不利益を被る可能性があれば、個人情報として扱わざるを得ない。情報に関わる人の理解を得て、原則として出していくものだ」
分離技術 近く結果 ―政府方針は、処理水に含まれる放射性トリチウムの分離技術の検討も注力するとしている。進展は。
「一般の意見公募を行い、2次審査的な評価を行っている。近々に結果のような形で公表する。将来に向けて技術開発に目を向けていくことは重要だ」
―溶融核燃料(デブリ)の取り出しへ課題は。
「2号機は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、スケジュールで苦労しているが、ある意味で順調だ。(デブリ取り出しに使う)ロボットアームなどを、いかに現場を模擬して動作試験できるかが鍵だ。1号機は内部調査で、期待できる成果を上げられそうな印象を持った」
―廃炉は当初目標より長期化するという指摘が強まっている。どう考えているか。
「事故から30~40年で終わるように活動していくことが大事だ」
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