【震災11年・備える力】コロナ下/感染恐れ避難ためらわぬように

新型コロナウイルスの収束が見通せない中、県内の各自治体は、感染対策に細心の注意を払った避難所運営や避難場所の確保を進めている。「コロナ下にあっても、災害時は命を守ることが最優先だ」。自治体職員の模索が続いている。
「体調不良者を受け入れる場合の対応は」―。郡山市では昨年7月、台風シーズンを前にコロナ下に対応した避難所訓練が行われた。
災害発生時に校舎を避難所として提供する専門学校の担当者や市職員ら約60人が参加し、避難者の検温から収容までの一連の流れを確認した。
「感染対策を図りつつ、どうやって円滑に避難者を受け入れるのか」。避難所への受け入れスピードと感染対策は相反しており、各自治体にとっては悩ましい問題だ。
熊本県で2020年7月に発生した豪雨災害の避難所では、他県からの応援職員が新型コロナに感染。避難者が外出自粛や面会制限を余儀なくされる事例も起きている。
郡山市は避難所を開設する際、国の基準に沿って避難者の間隔を2メートル離し、段ボールなどの間仕切りを設けることにした。感染対策やプライバシー保護につなげ、濃厚接触者については専用の避難所で受け入れる方針だ。
ただ、3密状態を防ぐために避難所の収容人数を減らすと、その分だけ別の避難所を用意する必要が出てくる課題もあり、市は対応を検討している。
郡山市防災危機管理課の佐藤真人防災係長(49)は「感染を恐れて危険な場所から逃げるのをやめたり、ためらったりしないようにしなければならない」とコロナ下で避難を促す難しさも指摘する。
避難所への避難だけではなく、多様な避難が感染防止対策につながると注目を集めている。19年10月の東日本台風で、郡山市は広範囲が浸水し、車で広域的に避難する必要性が高まった。そのため市は、車で避難できる場所の確保にも努めてきた。
公共施設や公園駐車場で計約3600台分を確保したほか、パチンコ店と協定を結び、災害時に市内9店舗の駐車場を最大で3230台開放してもらうことになった。
当初は新型コロナ対策を想定していなかったが、車中避難は個人のスペースを確保できるため、感染対策になるという新たなメリットも出てきた。そのため市の期待は大きい。ただ、車中避難は同じ体勢でいる時間が長くなり、エコノミークラス症候群に陥りやすいとの指摘もある。市は「手足を伸ばしたり、安全な場所で運動したりすることが必要」と予防策への理解も促す考えだ。
佐藤係長は「まずは平時からハザードマップで確認し、災害が起きたときにどうするのかを考えてほしい。そして災害時にすぐに行動してほしい」と普段の備えを求めている。
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