「廃炉作業」...自らの手で 小山さん、福島高専から技術者の道

福島高専の在学中に遭った東日本大震災と東京電力福島第1原発事故をきっかけに、廃炉に携わる技術者の道に進んだ。「福島の原発の廃止措置(廃炉)を成し遂げる」。原子力事業を担う日立GEニュークリア・エナジーで廃炉プロジェクトに関わる下郷町出身の小山伸也さん(28)にとって、それが歩みの目標だ。
「何がどう危ないのかが分からなかった。知らないということが一番怖かった」。高専2年の時、いわき市で激しい揺れに襲われた。寮の食堂で先生から原発の水素爆発を伝えられ、さらに衝撃を受けた。新聞やテレビでは事故について伝えるニュースが流れ続けた。しかし、17歳の高校生にとって、放射線が漏れることの危険性は漠然としか分からなかった。
事故をきっかけに、原子力分野の知識を学び始めた。自主的に資料を集め、各地で行われる復興関係の人材育成プログラムや外部講習に積極的に足を運んだ。勉強を進めるほど、本県に原発事故の爪痕が残り続けることを思い知った。「福島の復興に関わり続けたい」。そう考えるようになった。
技術者として自らの手で廃炉に関わる方法として、原発メーカーに就職する道があるとの助言を受け、進路を決めた。就職後は、同期たちが海外への進出などに意欲を見せる中で廃炉に関わりたいと強く希望し、専門チームへの配属が決まった。
就職から4年。第1原発で発生する汚染水処理が専門だ。業務は、汚染水から放射性物質を除去して処理水とする技術開発だ。汚染水の成分を分析し、データを基に新たな技術につなげる仕事だ。
汚染水処理のために必要な設備や処理方法を提案したり、設計したりするなど、業務は多岐にわたる。汚染水対策の一つでサブドレンと呼ばれる井戸から地下水のくみ上げや、多核種除去設備(ALPS)の開発にも関わった。
現在の最も大きな課題は、原子炉格納容器内部の溶融核燃料(デブリ)の取り出しに向けた新たな汚染水処理の技術開発だ。デブリを取り出す方法によっては、汚染水の成分や破片の状況などが変わる可能性があるため、あらゆる状況を想定し、汚染水処理の技術開発を進めている。
困難は多いが、小山さんはこうした廃炉作業が県内で進むことが今後の光明になると感じている。「原発事故は負の遺産かもしれないが、廃炉を通じて得た技術はほかにはない」。震災前を超える技術を開発し発信することが「福島の産業復興につながるはずだ」と力を込める。そのためにも、一日も早い廃炉実現が必要だと強く思っている。
長く厳しい道のりが予想される廃炉作業。小山さんは覚悟を語る。「生涯にわたって廃炉に関わり続けると思う。現役の間に終わりは見えないかもしれない。それでも、可能な限り最後まで見届けたい」(大内義貴)
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【11年間の歩み】福島高専に入学後、5年間の本科の後に専攻科に進み、原子力について学ぶため、さらに東北大大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻に進学した。大学院卒業後の2018年4月に日立GEニュークリア・エナジー(茨城県)に就職。現在は福島・廃止措置エンジニアリングセンターに配属され、東京電力福島第1原発で発生する汚染水の処理を中心に技術開発に取り組んでいる。
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