「相馬野馬追」大熊での騎馬行列復活へ 12年ぶり古里凱旋

 
震災前の大熊町で威風堂々と行列を披露する騎馬武者たち。今夏に12年ぶりに復活する=2010年7月24日、大熊町

 相双地方の国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」で、東京電力福島第1原発事故で全町避難した大熊町での騎馬武者行列が12年ぶりに復活する。標葉郷(しねはごう)騎馬会(浪江町、双葉町、大熊町)に所属する大熊町騎馬会が15日開いた総会で全会一致で実施を決めた。同町野上地区出身で現在はいわき市で暮らす小野田淳会長(47)は「古里への凱旋(がいせん)を果たし、復興への希望を町民に届けたい」と語った。

 大熊町騎馬会によると、騎馬武者行列は野馬追2日目の7月24日に、避難指示が解除された同町大川原地区で行う。南相馬市の雲雀ケ原(ひばりがはら)祭場地で行われる野馬追のメイン行事の一つ「神旗争奪戦」の後、地元に凱旋した騎馬武者たちが古里の地で勇ましい戦果報告や馬の足音を響かせる。具体的な実施内容は今後、調整する。現時点では5騎程度が参加する見込みという。

 大熊町の騎馬武者行列は、震災前は町中心部の下野上地区で行われていた。同地区は特定復興再生拠点区域(復興拠点)として間もなく避難指示が解除される予定だが、今回は2019年4月に先行解除され、帰還した町民が多く暮らしていることなどから大川原地区で実施することになった。

 町役場で開かれた総会には町外に避難する会員ら7人が出席。新会長に小野田さんを選出し、騎馬武者行列の再開などについて議論した。会員からは「馬の輸送など課題はあるが、騎馬でも徒(かち)でも大熊で行列をやろう」などと声が上がった。

 1000年以上の歴史がある相馬野馬追は、地域の平和と安寧を願う神事として継承され、1952(昭和27)年に国の重要無形民俗文化財に指定された。震災後も絶えず執り行われ、避難先から駆け付けた約400騎の騎馬武者たちが威風堂々と進軍する姿は、地域住民が古里再生に希望を持つ大きな誇りとなっている。新形コロナウイルスの影響で過去2年は規模を大幅縮小して行われたが、今年は7月23~25日の日程で3年ぶりに通常開催する方向で調整が進んでいる。

 行列を巡っては震災後、小高郷騎馬会が17年に南相馬市小高区で、標葉郷騎馬会が18年に浪江町で、それぞれ古里の本陣で行列を再開させた。(渡辺晃平)