金庫が守った郷土資料 請戸小から二十数冊、専門家と保全着手

 
丁寧に文書の保全に取り組む三原さん(左)と西村教授

 東日本大震災で大きな被害を受けた浪江町で、沿岸部の請戸小にあった学校文書の保全作業が17日、町役場で行われた。請戸地区は津波により古文書などがほぼ失われてしまったが、同校校長室の耐火金庫の中には郷土史の原本など二十数冊が残されていた。町教委は専門家の力を借りながら、これらの文書の利活用の方法を検討する。

 資料は、町教委の職員が被災5年後に金庫から取り出し、保管していた。今回の活動には、文書の保存や管理に詳しい国文学研究資料館の西村慎太郎教授や国立歴史民俗博物館の天野真志准教授らが関わっている。文書は津波の被害を受けたが、水に漬かっていた時間は比較的短く、カビなどの被害は少ないという。

 作業には、西村教授と天野准教授に加え、浪江町出身の歌人三原由起子さん、東洋美術学校保存修復科の中村萌音さんが参加した。西村さんらは、ほこりなどを取り除き、固着しているページをへらで一枚ずつ丁寧にめくっていた。

 現在までのところ、校長室の金庫に残されていたのは明治時代から昭和60年代にかけての資料と考えられており、西村教授は「請戸の歴史を伝える貴重な資料」と指摘する。作業は18日も行われる。