大熊に元気「花の魔法」 エリザベス女王称賛の庭師と町民連携

 
世界的な庭園デザイナーの石原さん(前列中央)と連携してプロジェクトを始動させた町民有志ら=大熊町

 エリザベス英女王に「緑の魔術師」と称賛された世界的な庭園デザイナー石原和幸さん(64)と連携した「花いっぱい運動」が大熊町で始まった。四季を通じて花が咲き誇る環境づくりを進め、東京電力福島第1原発事故からの地域の再生と、人の交流を生み出していくことを目指す。町民有志と石原さんが17日、1回目の花の植栽に汗を流し、運動の成功を願った。

 石原さんは長崎県出身。東京都などを拠点に活動している。生花店や庭造りの活動をする中で「エリザベス女王に認められたい」と考え、最も権威がある英国チェルシーフラワーショーに参加するようになった。

 卓越した技術とデザイン性を発揮し、エリザベス女王から計11個の金メダルを授与された。その際に「あなたは緑の魔法使いね」とたたえられたことを励みに各地で花を生かしたまちづくりなどを進めてきた。

 縁あって大熊町を訪れた石原さんは「人に元気を与える黄色い花を一面に植えれば、花を見に人が集まるのではないか」と直感。現在の大熊の風景が、かつて原爆投下から復興してきた古里長崎の姿と重なったことにも心を動かされた。

 周囲に思いを語ったことがきっかけで、景観でまちを活性化させるという趣旨に賛同し、有志が集まった。

 大熊町下野上地区にある都市再生機構(UR)の地域活動拠点「KUMA・PRE(クマプレ)」に勤務する田中由佳さん(31)もその一人だ。田中さんは双葉翔陽高で学び、農業クラブの部長を務めた。花が好きで、町内で花壇の植栽にも取り組んでいた。「町民が昔を思い出せるような環境を花でつくりたい」と望み、運動に加わった。

 17日の活動では参加者が目標とする一面の黄色い花(イエロー)、石原さんのあだ名の魔術師(マジシャン)、大熊町の英語の頭文字を取った「YMO」のTシャツを着て集合し、クマプレの敷地内に花の苗を植え付けた。今後は花が人を呼び、住もうと感じてもらうような環境整備に向け、植え付ける花の種類の選定などを進めていく。

 イベントで町にぎわい

 クマプレでは、交流イベント「ふらっとクマプレ」が開かれた。飲食ブースなどが出店され、多くの人でにぎわった。URと施設を運営するバトンの共催。

 施設がある大熊町下野上地区は特定復興再生拠点区域(復興拠点)にあり、6月末に避難指示が解除された。参加者の一人は「下野上地区にこれだけの人が集まったのは久しぶりではないか」と語り、地域の活気ある様子を見つめていた。