双葉郡に女子会の輪 被災地で活動の仲間集う

 
楢葉町で開かれた双葉郡女子会の参加者たち=17日午後8時

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興が進む双葉郡で、郡内で活躍する女性たちが「双葉郡女子会」を結成した。「みんなで集まれば楽しいよね」「新しい出会いとつながりができた」。避難先から古里に帰って来た人から、復興支援のために県外から移住した人まで、それぞれの歩みは異なるが、被災地で奮闘する仲間として親睦の和を広げている。

 17日夜、楢葉町の家庭料理スナック「結のはじまり」に浪江、大熊、富岡、楢葉、川内の5町村から女性13人が集まった。それぞれに夢を追う双葉郡女子会のメンバー。夜が更けるにつれて、会話は熱気を帯びていった。その中心に、大熊町出身の南場優生海(ゆうみ)さん(27)の姿があった。

 南場さんは2020年1月に大熊町に帰還。浜通り各地で働く中で「隠れているように見えるけど、双葉郡にはさまざまな分野で活躍している女子が『生息』している」と感じていた。大熊の地縁の中で仲良くなった若手女子、仕事を通じて知り合ったメンバー、面識のある各地の女性のリーダー的存在らがおり、「それぞれを紹介できたら、楽しいコミュニティーができるのではないか」と考えた。

 「女子会をしてみませんか」。呼びかけてみたところ「面白そうだね、いいね」と反応があった。初会合は今年4月、女性が店主を務める浪江町の割烹貴久で開かれた。双葉郡5町村から17人が集まった。杯を傾けながらのひとときで、一気に距離が縮まった。互いに多少の面識があるという関係だった人々が、女子会を契機にプライベートでも仲を深めるケースがあった。

 「それぞれの町村に移住してきたけど、友達がほしいなと思いながらその機会がなかった人もいたと思う。若手が先輩格の女性たちと知り合う場にもなったはず」。確かな手応えを感じた南場さんは17日の第2回の会合を企画し、千葉県出身の古谷かおりさん(39)が営む「結のはじまり」を会場に選んだ。16年に楢葉町に移住した古谷さんは「当初はこんなにぎやかな女子会ができるなんて想像できなかった。若くて軽やかな女性が増えた」と感慨深そうに語った。

 須賀川市から浪江町に移住し、地域おこし協力隊として活動する吉野碧さん(25)は2回目の参加となった。「同じ双葉郡で会ってみたい人に会えるきっかけがあり楽しい。行きたかったお店に行けるのもうれしい」と、すでに次回の開催を楽しみにしている。

 南場さんは、笑顔であふれる会場を見て「まだまだたくさん誘いたい人がいる。双葉郡8町村の垣根を越えて、各地のお店を楽しみながら、キュートでハッピーな女子のコミュニティーの輪を広げたい」と強い思いを語った。(渡辺晃平)

 「熊女」「浪女」すでに結成

 双葉郡のそれぞれの地域に女性のコミュニティーができつつある。大熊町では昨夏、町に帰還・移住した女性らでつくる「熊女(くまじょ)」が発足した。通信アプリLINE(ライン)のグループでつながり、メンバーは現在34人に上る。原発事故に伴う避難指示が昨年6月に解除された特定復興再生拠点区域(復興拠点)のJR大野駅周辺などに住むメンバーらがそれぞれの取り組みのPRからプライベートな誘いまで、盛んに情報交換している。今年4月に居住人口が2千人を超えた浪江町でも「浪女(なみじょ)」というコミュニティーが形成されている。