避難元と「関係望む」1.1万人 13市町村、住民票移転者の7%

 

 東京電力福島第1原発事故で原発周辺13市町村から住民票を避難先などに移した後も、元の自治体との関係維持を希望する「特定住所移転者」は4月1日時点で1万1112人で、住民票を移した人の7%だった。福島大共生システム理工学類の川崎興太(こうた)教授がまとめた。ただ特定住所移転者への施策は主に広報紙の送付にとどまり、元の自治体の運営などに意見を反映させる住所移転者協議会を設置している自治体はなかった。

 川崎氏は4、5月、県と13市町村にアンケートなどを実施し、特定住所移転者を含む原発避難者特例法の運用状況を初めて調べた。

 川崎氏は「各自治体が移転者の意向を全て把握しているとするなら、特例法に基づく特定住所移転者への施策はそれほど重要な役割を果たしたとは言えない」と指摘。一方、特例法では避難者が住民票を移さなくても、避難先で同じ行政サービスを受けられるよう定めており、その点については「避難生活を支える上で重要な役割を果たした」と評価した。

 自治体によって特定住所移転者の運用状況は異なり、希望の有無にかかわらず住民票を移した人を登録している富岡町が4189人と最も多かった。

 特定住所移転者への施策は広報紙の送付が多く、避難先から町へのバスツアーや交流会の開催などもあった。元の自治体に対し、間接的な参政権の役割を持つ住所移転者協議会を設置している自治体はなく「村ホームページなどで村の現状を周知し必要に応じ連絡を頂いている」(飯舘村)、「全国各地に離散し、協議会を組織することが難しい」(富岡町)などの理由があった。

 川崎氏は今後、特例法に関する被災者の意識調査や特例法の終期を見据えた被災者の生活実態に関する調査などを実施する方針で「被災者側から特例法がどう見えているかを調査する。不便がある場合は法律を改正する必要があるかもしれない」としている。

避難住民・住所移転者・特定住所移転者などの状況