浪江に今秋調剤薬局開設へ 原発事故後初

 
今秋の開局に向け整備が進む建設現場。左奥の建物は浪江町役場

 浪江町に今秋、調剤薬局が開設される見通しとなった。町内で調剤薬局が営業するのは東京電力福島第1原発事故後初めて。原発事故の被災地では薬局や薬剤師が不足しており、調剤薬局の開設による医療環境の充実や利便性の向上が期待される。

 町によると、震災当時は町内に七つの調剤薬局があったが、原発事故による全町避難を経て、いずれも再開の見通しが立っていない。町民はこれまで浪江診療所で院内処方してもらうか、院外処方で南相馬市などの調剤薬局に出向く必要があった。

 今秋に薬局を開設、運営するのは大手調剤薬局グループのI&H(阪神調剤グループ、兵庫県芦屋市)の子会社で、福島、宮城両県に調剤薬局を構えるいずみ調剤(福島市)。開設の背景には、1995年の阪神・淡路大震災で被災した経験から「東日本大震災の被災地の復興に貢献したい」との思いがあるという。

 調剤薬局が開設されるのは浪江町役場近く。町営の浪江診療所に隣接した建設地の民有地では現在、建設作業が進む。

 建物は木造平屋で延べ床面積は約165平方メートル。薬剤師が常駐し、調剤や市販の医薬品、介護用品などを取り扱う。平日のみの営業を予定している。医薬品の備蓄による災害対応も図る見通し。将来的には、地元の薬剤師の雇用も見据える。

 いずみ調剤社長でI&H東北グループ長の菅原憲太郎さん(40)は開設に向け「I&Hは阪神・淡路大震災で薬局が被災し、多くの支援をいただいた。その恩返しの気持ちから、福島の被災地で復興支援がしたい」と話した。