13年ぶり「じゃんがら念仏踊り」 大熊に太鼓、かねの音戻る

 
大熊町夫沢で13年ぶりに奉納された長者原じゃんがら念仏太鼓踊り

 大熊町の無形民俗文化財「長者原じゃんがら念仏太鼓踊り」が18日、東京電力福島第1原発事故後初めて13年ぶりに同町夫沢の塞神社で奉納された。神社の再建に合わせて行われたもので、第1原発に近くいまだに住民帰還が進まない地区に、物故者の鎮魂と地区の再生を願うかねと太鼓の音が響いていた。

 神社のある夫沢2区は古くから長者原と呼ばれ、地区の保存会によりじゃんがら念仏太鼓踊りが伝えられてきた。毎年8月のお盆に神社で奉納され大熊の夏の風物詩となっていたが、原発事故による住民避難のため中断を余儀なくされた。

 地区は、国道6号から東側は中間貯蔵施設、その他の地域も帰還困難区域となった。夫沢2区行政区長の山口三四(みつよし)さん(79)は「古里を失いたくない思いから神社の再建を始め、今年夏に完成した。神社ができたら必ず踊りを奉納しようと決めていた」と語った。

 当日は境内にかつての住民らが集まり、久しぶりの再会を楽しみながら踊りに目を細めた。いわき市から駆け付けた古山茂さん(95)は「本当に良かった。昔のことを思い出した」と笑顔を見せた。

 夫沢2区では震災12年が過ぎる中で少なくとも40人の住民が避難先で亡くなった。山口さんは「お墓はみんなばらばらだが、名前だけでも古里に帰ってもらおうと慰霊碑の建設を計画している。碑の前でも踊りを奉納したい。踊りの継承には町の力も借りていく必要があるだろう」と思いを述べた。