騎馬行列、14年ぶりに双葉でも 相馬野馬追行事、全5市町復活

 
東日本大震災前に双葉町で行われた騎馬武者行列(双葉町提供)

 東京電力福島第1原発事故に伴い全町避難した双葉町で今年5月26日、国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」の騎馬武者行列が14年ぶりに復活する見通しとなった。標葉郷(しねはごう)騎馬会(浪江町、双葉町、大熊町)に所属する双葉町騎馬会が方針を固めた。復活すれば、野馬追が繰り広げられる相双地方の5市町全てで、震災や原発事故で休止していた関連行事が再開することになる。

 復活する騎馬武者行列は、野馬追2日目に行われる「帰り馬行列」。南相馬市の雲雀ケ原祭場地で戦いを繰り広げた騎馬武者たちが古里に凱旋(がいせん)し、戦果を報告する。現時点では7騎程度が参加する見通しだ。

 地域の平和と安寧を願う騎馬武者の勇ましい口上や馬の脚音が戻ってくることに、双葉町騎馬会長の中川健治さん(60)は「復活するまでは大変なことも多いだろうが、双葉を元気にしたいよね」と思いを語った。

 野馬追の行列は、震災と原発事故からの復興に伴い各地で徐々に復活した。原発事故で避難指示が出た地域では南相馬市小高区で2017年、浪江町で18年、大熊町で22年に行列を再開していた。

 双葉町では避難指示が続き、再開の見通しが立っていなかったが、22年8月にJR双葉駅周辺の特定復興再生拠点区域(復興拠点)で避難指示が解除され、今春に駅西側の公営住宅の整備が完了することも踏まえ、行列再開の方針を固めた。現在は双葉町騎馬会と町教委が、当日の具体的な内容を議論している段階だ。

 中川さんは現在、南相馬市で避難生活を送りながら野馬追に参加し続けている。今年も家族3世代で一緒に世話している馬と共に、出場する予定だ。

 知人の誘いで野馬追に参加し始め、今回で37年目となる中川さん。今年は孫が初陣を迎える。出場する元之将(げんのすけ)ちゃん(4)は「馬から落っこちないように頑張る」と話し、本番での騎馬武者姿は、家族の楽しみだ。

 震災や原発事故を乗り越え、次世代へ受け継がれる野馬追。今年は近年の猛暑を受け、開催日程を変更する大きな転換期だ。今年は5月25~27日の3日間。騎馬武者たちが威風堂々と古里で行軍し、地域住民に古里再生に向けた希望を届ける。(渡辺晃平)