後悔は未来への教訓 須賀川・藤沼湖、避難大切さ...子どもたちに
東日本大震災で農業用ダムの藤沼湖が決壊し、犠牲になった人を追悼する式典が10日、須賀川市滝の防災公園で行われた。式典には、祖母を亡くした女性も参列。祖母の冥福を祈り、静かに手を合わせる一方、教訓を語り継ぎ、前に進んでいく決意を新たにした。
「時間が止まっているのか動いているのか、今でも分からない」。須賀川市長沼地区の和智裕子さん(40)は、藤沼湖の決壊で祖母さつきさん=当時(86)=を亡くした。それから13年を迎えるが、今も後悔の念に駆られる。
あの日、裕子さんは自宅で経験したことのない激しい揺れを感じた。揺れが収まった後、異変に気付いて外へ出ると、自宅近くの川の水かさが明らかに増していた。「何かがおかしい」。そう感じた。
自宅に戻ると、同居するさつきさんの様子が目に入った。だが「まずは車を(安全な)高台に持っていこう」と考え、裕子さんは祖母を置いて自宅を出た。その直後、藤沼湖から勢いよく流れ出た水は山をえぐりながら濁流となり、家や田畑を押し流していった。
裕子さんが藤沼湖の決壊を知ったのは、自宅が濁流にのまれ、押し流された後だった。「なぜ祖母を車に乗せていかなかったのか」。悔やんでも悔やみきれない。
震災後、裕子さんは3人の子どもに恵まれた。「子育てをしているうちは時がたつのが早く感じた。それでも震災のこととなると、時の流れがゆっくりに感じる」という。
震災を知らない3人の子どもたちに対し、裕子さんは幼い時から避難の重要性などを伝えてきた。「自分と同じ思いをしてほしくない」という一心からだ。3人は現在、小学1~4年生に成長。裕子さんは「伝えてきたことが少しずつ理解できるようになってきたかな」と感じている。災害はいつどこで起きるか分からない。「自分の頭で考え、行動できる大人になってほしい」。そう言って、3人の子どもを見つめた。(千葉あすか)
追悼式典で祈り
須賀川市滝の防災公園で10日に行われた追悼の式典「大震災と藤沼湖の記憶をつなぐつどい」では、参列者が藤沼湖の決壊で犠牲となった人たちに祈りをささげた。藤沼湖決壊による慰霊碑建立実行委員会の主催。
遺族や周辺住民ら約80人が黙とうし、献花台に花を手向けた。同委員会の柏村国博実行委員長が「自らの命を守るためにも、後世に教訓を伝えていく」と述べ、橋本克也市長らがあいさつした。
藤沼湖の決壊では当時、貯水されていた約150万トンの水が下流に流れ、7人が死亡、今も1人の行方が分かっていない。
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