「廃炉作業の質向上を」 東電廃炉推進カンパニー小野明最高責任者

 
事故から10年の教訓や今後の見通しを語る小野氏

 東京電力福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は、原発事故から丸10年を前に福島民友新聞社のインタビューに応じ、2031年までの廃炉工程を詳細化した「廃炉中長期実行プラン」を月内にも改定する方針を示した。廃炉の完遂には作業の質を向上させていくことが必要と強調した上で、3号機の地震計の故障の放置については「対応があまりにも遅かった」と陳謝した。

 ―本県沖地震の対応で、地震計の故障の放置が明らかとなった。企業として「緩み」を感じるが、10年間の教訓は。
 「毎日のように確認される問題に対応していた時期から、今は品質が重要な問題になっている。仕事の質が以前と同じでは駄目だ。情報の出し方も向上させる余地がある。『物心両面』が非常に大きな教訓。質を常に考えながらやらないと、40年の廃炉は順調に進まない」

 ―地震計の故障を現場ではどう捉えているのか。
 「言い訳だが放置をしたというより、対応があまりにも遅かった。(県民や原子力規制委員会の)期待を裏切ってしまい、じくじたるものがある」

 ―ゼオライト土のうや1~3号機の原子炉格納容器上部にあるコンクリート製のふた「ウェルプラグ」など、溶融核燃料(デブリ)以外にも高線量の課題は山積しているのではないか。
 「ウェルプラグはデブリの取り出しに向け対策が必要だ。東電として調査を進める。ゼオライトについても早い段階で方向性を示し、具体的な対策に取り掛かる」

 ―新型コロナウイルス感染症が与える廃炉工程への影響は。
 「構内でコロナの発症は抑えられており、作業に大きな影響はない。2号機のデブリの試験的取り出しは製品を英国で製作しているため、影響があるのは事実だが、今の状況では大きな影響はないと思っている。廃炉中長期実行プランについては、情報や状況の変化を反映し年度末までに公表したい」

 ―トリチウムを含む処理水のタンクの満杯時期が先延ばしになったのは、まだ余裕があったということか。
 「降雨量が少なく、汚染水の発生量が抑えられ貯金ができた。国の方針が出れば敷地利用計画を含めた検討の始点が固まるので、外部に説明していきたい」