「復興の種」宇宙へ 被災3県からの記念品、7月までISSに

 
打ち上げられるファルコン9型ロケット

 本県など被災3県から集めた植物の種などの記念品を積んだファルコン9型ロケットが、宇宙に打ち上げられる。東日本大震災10年の節目を迎え、関係者は支援への感謝と復興を伝える事業の成功を願い、宇宙に思いをはせる。打ち上げは4日予定。

 事業名は「東北復興宇宙ミッション2021」。被災3県の市町村でつくる実行委員会が主催し、震災復興に取り組む一般財団法人ワンアース(茨城県龍ケ崎市)が事務局を務めている。

 記念品は参加する約50の自治体などから集めた。各10グラムがパック詰めされ、ドラゴン補給船に搭載された。補給船は、米フロリダ州の米航空宇宙局(NASA)ケネディ宇宙センターからロケットで打ち上げられ、予定通り進めば日本時間5日午後6時ごろには国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングする。地球帰還は7月で、同月下旬に日本に戻る見通し。各自治体が記念品を通して復興や地域振興に役立てる。

 待ちに待った打ち上げに関係者も期待する。本県のオリジナル酵母「うつくしま夢酵母」を提供し「東北復興宇宙酒」の醸造を計画する県酒造組合の阿部淳専務理事(64)は「今冬には"宇宙酒"の新酒ができる。話題性は十分。ひとまず無事に打ち上げと帰還が成功することを願うばかり」と話す。

 須賀川市では、児童生徒が採取したボタンの種が宇宙に向かう。昨年8月に採取を行った須賀川三中の松谷恵那さん(3年)は「あの種が宇宙に行く実感はまだないが、無事戻ってきてほしい」。また飯舘村では村産エゴマが記念品に。村の農業再生に取り組む一般社団法人「いいたて結い農園」が栽培したもので、同農園理事の三瓶政美さん(72)は「村の農業に目を向けてもらうことで、農業振興のきっかけの一つになれば」と話す。

 ワンアースの長谷川洋一代表理事(59)は「記念品を通して、次世代を担う子どもたちに宇宙への希望を感じてもらい、将来の種を育むようになればうれしい」と語った。