両陛下、被災者に寄り添う姿 双葉、大熊町民とオンライン交流

 
天皇、皇后両陛下と懇談する(右から)双葉町の山本さん、谷津田さん、梅田さん、伊沢町長=28日午後、東日本大震災・原子力災害伝承館(代表撮影)

 天皇、皇后両陛下は28日、東日本大震災から10年が経過した本県の復興状況をオンラインで視察され、東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域を抱える双葉、大熊両町の被災者を見舞われた。両町民との懇談では10年の苦労にねぎらいの言葉を掛けられたほか、復興に向けた今後の課題や住民帰還の動きなどについて質問された。

 双葉町では、被災市町村で唯一、全町避難が続く町の状況について伊沢史朗町長が説明。天皇陛下は現在の課題について聞かれ、皇后さまは「今、戻ることを希望する方はどれくらいいるのですか」と質問したという。伊沢町長は「(オンラインではあったが)温かい気持ちが伝わってきて、本当にありがたかった」と話した。

 大熊町では、天皇陛下が吉田淳町長に「今、町の一番の大きな課題は何ですか」と質問した。来春に避難指示が解除される地域がある一方、まだ解除の見通しが立っていない地域があることを説明した吉田町長は、懇談後に「両陛下は震災以来ずっと被災者に寄り添っていると感じた。新型コロナウイルスがなければ一度は町に来ていただき、本当の町の状況を知ってもらえれば」と述べた。

 両町民らとの懇談に先立ち、両陛下は内堀雅雄知事から本県の復興状況について説明を受けた。「農林水産業、漁業はまだ大変なこともあるのではないですか」などと質問し、内堀知事は、本県漁業が本格操業に向けた移行期間に入ったことを説明した上で「震災前の水準に戻るよう、しっかり取り組んでいきたい」と伝えた。東日本台風(台風19号)や2月の本県沖地震、新型コロナウイルス感染症の影響についても気に掛けたという。

 また、両陛下は双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館をオンラインで視察した。視察後、内堀知事は「県民にとって大きな励みとなり、力強い復興を成し遂げようとする本県への何よりの支援になった」と感謝の気持ちを表した。

 両陛下の本県へのお見舞いは当初、2月16日の予定だったが、同13日に発生した本県沖地震を受けて見合わせとなった。両陛下は震災後、皇太子ご夫妻として3度来県し、被災した県民を励ました。2019年には即位後初めて本県を訪れ、東日本台風の被害を受けた本宮市などで被災者をいたわった。