10年の歩みに温かい言葉 両陛下が激励 前向く双葉、大熊町民

 
天皇、皇后両陛下との懇談を終え、取材に応じる(左から)伊沢町長、梅田さん、谷津田さん、山本さん=28日午後4時40分ごろ、双葉町・東日本大震災・原子力災害伝承館

 東日本大震災から10年が経過する中、28日にオンラインで双葉、大熊両町の被災者を見舞われた天皇、皇后両陛下。「この10年、いろいろ大変だったのではないでしょうか」。両陛下からの温かい言葉に、町民は古里の復興に向けて前を向いた。

 いわき市に避難している双葉町民との懇談は、同町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」と結んで行われた。被災当時、同町でガソリンスタンドを経営していた町婦人会長の梅田寿嘉(すが)さん(74)は、「とても緊張して体が硬くなったが、とても優しい言葉で身近に感じられた」と目を細めた。

 両陛下は、全国に避難している約230人の町婦人会員間の交流をどのように図っているかについて関心を持たれていたという。梅田さんは「伝統ある婦人会をなくしてはいけないと活動を続けている。女性の底力で復興の役に立ちたい」と気持ちを新たにした。

 町産業交流センターの管理に当たる福島クリエイト社長の谷津田尊之さん(66)は「伝承館や産業交流センターをベースに復興を加速させていきたい」と改めて決意。同センター内のファストフード店「ペンギン」のマネジャー山本敦子さん(49)は、子育てについて皇后さまからねぎらいの言葉を受け「どう言葉で表していいのか分からない」と感無量の様子で語った。

 両陛下は、大熊町役場に集まった同町民3人とも懇談された。大川原地区に自宅を再建した元町議会議長の松永秀篤さん(68)は、「大熊の空気を吸うだけでも和む」と帰還した思いを伝えた。両陛下の穏やかな雰囲気に「スムーズに会話ができた」と話した。

 鈴木照重さん(77)は避難先の会津若松市の公営住宅で自治会長などを務めてきた経験などを語り「陛下が大熊に関心を寄せられているのが分かった」と喜んだ。町内で雑貨店「鈴木商店」を営む鈴木真理さん(39)は、町内で事業再開した状況を説明。「『お体に気を付けて』とのお言葉に、すごく温かい気持ちになった」と振り返った。