新成人、古里・双葉復興へ思い強く 町内で10年ぶり「成人式」

 
町内で10年ぶりとなる成人式で、マスクを外して記念撮影に臨む双葉町の新成人=1日午後、双葉町産業交流センター

 双葉町は1日、同町中野地区の町産業交流センターで成人式を行った。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後の町内開催は初めて。新成人たちはいまだ全町避難が続く町内で、それぞれの目標の実現や古里復興への思いをさらに強めた。

 震災当時、小学4年生だった新成人62人のうち、19人が出席した。新成人の石川直人さん、佐藤葉月さんに成人証書を手渡した伊沢史朗町長は式辞で「震災後、町内で初めての成人式を行えることは、町が復興への歩みを着実に歩んでいることの証左」と述べた。

 誓いの言葉で、半谷愛さんは「お世話になった町や地域のために、自分たちのできることで貢献していきたい気持ちでいっぱい」、落合晃輝さんは「成人としての自覚と町民としての誇りを忘れず、優しさと勇気を持って夢に向かい前に進んでいく」と力強く誓った。

 町は当初、いわき市で1月に成人式を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期していた。再び成人式を行うに当たり、町教委が実施会場に関するアンケートを行った結果、双葉町での開催を望む声があり、10年ぶりの町内開催を決めた。

 新成人や町関係者らは、2週間前からの体調管理や行動履歴の記入、当日の検温、マスク着用などの対策を取って出席した。

 待望の開催、安堵

 「直前で成人式が中止になるのではと不安だった。この日を迎えられてよかった」。原発事故後、町内で初めての成人式を終え、実行委員長の石井美有(みゆ)さん(20)=立教大3年=は安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

 1月に行われる予定だった成人式が延期になり、一時は「中止になるのではという怖さがあった」という。副委員長で仲の良い佐藤葉月さん(20)と食事中、中野地区に「産業交流センターというかっこいい施設ができた。そこでできないか」と話題になったことがきっかけとなり、震災10年の節目の年に町内開催が実現した。

 式では昨秋、県内外から集まる同級生に双葉町の今を知ってもらおうと、双葉南、双葉北両小、児童館など、なじみ深い場所を撮影した動画を作成して上映した。ふたば未来学園高に通って双葉郡への愛着を深め、町内に度々足を運ぶ石井さんでも「復興については知らないことばかり」。将来はまちづくりに携わりたいと考えており「人の財産『人財』となれるよう、知識や経験を積み上げていきたい」と誓いを新たにする。