「復興感じる」8割 インフラ「目に見えて再生」風評「まだまだ」

 

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から丸10年を迎える中、県内59市町村の首長の約8割が復興を感じていることが、福島民友新聞社のアンケートで分かった。多くは公共インフラなどハード面の復興を評価した。ただ、実感の有無とは別に、ほとんどが農林水産物や観光面での風評払拭(ふっしょく)と県民の「心の復興」が進んでいないと指摘、復興を感じているものの「道半ば」とした。

 「実感している」「ある程度実感している」「実感は少ない」「実感していない」「その他」の五つから一つを選んでもらい、意見と理由を尋ねたところ、6市町村が「実感している」、41市町村が「ある程度実感している」と回答した。

 「実感」と答えた6市町村のうち、須賀川市の橋本克也市長は「まちの姿や市民の暮らしが目に見える形で再生している」、桑折町の高橋宣博町長は「相馬福島道路の供用開始など明るい兆しが見られ、未来への展望を描ける段階に達せた」と理由を挙げた。

 「ある程度実感」とした41市町村のうち、会津若松市の室井照平市長は「観光客、教育旅行も震災前の約9割まで回復した」と回答した。ただ、多くが風評払拭など引き続き取り組まなければならない課題が残っており、「復興は道半ば」との認識だった。相馬市の立谷秀清市長は風評対策に加え「被災者の心のケアに引き続き取り組まなければならない」とした。

 「実感は少ない」は10町村で、会津、県南地域が多く、キノコなどの出荷制限や観光面での風評の影響が理由だった。檜枝岐、只見、磐梯、塙、平田の5町村は、第1原発で発生する放射性物質トリチウムを含む処理水の処分方法が決まっていないことを課題に挙げた。

 「実感していない」との回答はなかったが、南相馬市の門馬和夫市長は「地域により実感が異なる」、喜多方市の遠藤忠一市長は「実感できる部分もあれば、できない部分もある」として「その他」を選んだ。

 結果について、福島大共生システム理工学類の川崎興太准教授=都市計画=はインフラ整備が進んだ一方で、風評払拭や農林水産業の再生など課題は山積しているとし「(課題が)一挙に解決することはない。農産物などの風評については検査を重ね、地道に伝えてくしかない」と指摘した。

避難自治体地域差も

 避難指示が出るなどした12市町村をみると、比較的早期に避難指示が解除された楢葉、川内は復興を「実感している」としたが、第1原発の立地する大熊、双葉は「実感は少ない」と答え、地域差が浮き彫りとなった。

 楢葉町の松本幸英町長は「住民の日々の暮らしに必要な要素がそろってきた」、川内村の遠藤雄幸村長も「インフラ、生活環境の整備が進み、帰還率が8割を超えた」と復興が着実に進んでいるとの認識を示した。

 双葉町の伊沢史朗町長は「全町避難を継続している」、大熊町の吉田淳町長は「除染や避難指示解除のスケジュールすら示されない区域がある」として10年を経てもなお、住民の帰還が進まない苦悩を明かした。