「月にトンジル」 少しほろ苦い成長物語

 
あかね書房 1430円

 6年生の徹(とおる)、大樹(だいき)、旬(しゅん)、万千(まち)の4人は幼稚園(ようちえん)の頃(ころ)からいつも一緒(いっしょ)で、今もその仲は続いている。グループ名は鉄の絆(きずな)「鉄四 テツヨン」だ。

 誰(だれ)よりもテツヨンが好きな徹は、この関係が永遠(えいえん)に続くものと思っていた。しかし、このごろはそれぞれ好きなことや興味(きょうみ)が違(ちが)ってきて、話題もすれ違うようになってきた。さらに、大樹の引っ越(こ)しをきっかけに、徹、旬、万千の関係はぎくしゃくし始める。

 徹はこの変化に悩(なや)むが、祖父(そふ)が語ったある言葉から、人は誰(だれ)でも表に見せない別の面を持つことに気がつく。そして、これまで見えなかった仲間たちの内面を思い、テツヨンの前とは異(こと)なる姿(すがた)を受け入れていくのだった。

 友情(ゆうじょう)の変化と、人の心の複雑(ふくざつ)さを知った徹の、少しほろ苦い等身大の成長物語。徹の語りで進む本書は、会話文が生き生きとし、ユーモアもあり読みやすい。戸惑(とまど)いながらも前に踏(ふ)み出す徹に、共感を覚える人もいるのでは。高学年に薦(すす)めたい一冊(いっさつ)だ。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています