【まち中華物語】王王楼・白河市 シューマイ愛一直線

 
2代目の飯村悟さん(左)と父春雄さんが力を合わせ店を切り盛りしている(石井裕貴撮影)

 「宇都宮がギョーザの街なら、白河はシューマイの街にしたい」―。2代目の飯村悟さん(41)が抱く夢だ。店を構える国道沿いには名物の白河ラーメンを出す店が数多く並ぶ中、新名物「白河焼売(シューマイ)」を広めるため奔走する日々を送っている。

 地元食材生かす

 原動力は人一倍強いシューマイ愛だ。「小さい頃から、店で出していたシューマイが大好き。より多くの人に魅力を知ってもらいたい」。その思いが8年前に一気に強まった。隣県の宇都宮に対抗して、シューマイによるまちおこしを考え付いたからだ。

 白河には、シューマイにぴったりな食材が多いことも後押しとなった。ブランド豚「白河高原清流豚」や、酒蔵「千駒」の日本酒、根田醤油のしょうゆ、タマネギなどの野菜だ。

 これらの地元食材を使用し、6次化商品として発信していこうと考えたが、周囲の同業者からはあまり興味を示してもらえなかった。そもそも白河にシューマイを提供している店が少なかったことが要因の一つだった。

 それでも「新しい名物で、白河に貢献していきたい」との思いから、地元食材を使った「白河焼売」を独自開発。高齢者施設を利用するお年寄りに白河焼売を振る舞うなど、地道な取り組みを進めていると、当初は興味を示さなかった人も付いてきてくれるようになった。

 「こんなことをしてみたら?」「こんな補助金があるよ」。徐々に協力者が増え、2015年には市内で「しらかわしゅうまいサミット」の開催にこぎ着けた。19年まで毎年開催し、北海道から佐賀県までの全国10都市から有名店が出店。シューマイを提供し、数万人が来場する大盛況のイベントとなった。

 「やりたい道を突き進むのは、父の背中を見て育ったからだと思う」と悟さん。一度決めたらやり続ける性格は父春雄さん(68)譲りだ。

 「自分もラーメンなどを作り、中華料理を広めたい」。子どもの頃からラーメン好きだった春雄さんの夢を形にしたのが今の店だ。春雄さんが高校卒業後、東京都のJR鶯谷駅付近の中華料理店で約7年にわたり修業を積み、地元に戻って開店した。

 開店前には、ちょっとした家族内の"議論"もあった。覚えやすい店名として、電話帳で最後になる『王王(ワンワン)』が候補に挙がったが、「『ワンワン』だと犬のようだ」。その意見から、建物という意味がある「楼(ロウ)」の文字を付け足すことで落ち着いた。

 それから43年が過ぎ、春雄さんは「最初はみんな店名を読めなかったが、今ではありがたいことに常連さんも増えて覚えてもらえた」と笑顔を見せる。

 再びサミットを

 店は、悟さんが大好きなシューマイはもちろん、コショウの利いた酸辣湯麺(サンラータンメン)、自家製の芝麻醤(チーマージャン)を使った担々麺などを目当てにするお客でにぎわう。

 悟さんは、新型コロナウイルスの影響を受けた3年間、春雄さんと一緒に店を守った。そして、もう一度、19年を最後に実現できていないサミットの開催という目標に向かって歩み始めたところだ。

 「落ち着いたらまたサミットを開き、もっともっと白河焼売の魅力を広めたい」。コロナ禍を乗り越え、シューマイへの情熱はさらに燃え上がっている。(伊藤大樹)

お店データ

王王楼の地図

【住所】白河市立石105の1

【電話】0248・22・1979

【営業時間】
午前11時~午後3時
午後5時~同9時

【定休日】大みそかと元日以外は無休

【主なメニュー】
▽白河焼売(5個)=440円
▽王王楼麺=850円
▽酸辣湯麺=850円
▽担々麺=850円
▽五目焼きそば=850円
▽肉焼きそば=850円
▽餃子(ギョーザ)(6個)=440円
▽春巻き=440円
▽王王楼サラダ=500円
▽回鍋肉(ホイコーロー)=1400円
▽豚肉とピーマン炒め=1400円
▽黒酢の酢豚=1400円
▽麻婆(マーボー)豆腐=880円
▽焼飯(チャーハン)=850円
▽土日限定日替わり御膳=1160円
▽スタミナコース=1600円(2人から)
▽お得なコース=1800円(2人から)

【店主メモ】趣味はトレーニングジム通いと、ゴルフ。趣味を通じて得た人とのつながりを大切にしている。

白河焼売地元の食材を使った人気メニューの「白河焼売」

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。