◇田中須美子さん(94)《14》 現在でも全て自分の歯

 

◆クラロン会長 

 年齢の話になるとたいてい驚かれて「健康の秘訣(ひけつ)は?」とよく聞かれます。
 94歳になっても現役の経営者として働いているのだから興味が湧くのでしょう。でも特段、健康を意識しているわけではありません。強いて挙げるなら食生活でしょうか。

 私は10種類の食材を毎日必ず取るようにしています。牛乳やチーズ、ヨーグルトをはじめ黒ニンニクやゴマ、サツマイモ、タマネギ、そして納豆やきな粉、のり、ワカメです。牛乳はすりゴマかきな粉を混ぜて飲み、タマネギはスライスして食べます。

 甘いお菓子や果物は苦手で、好物は焼きサケ。特に皮のところが好きです。幼いころ、おやつ代わりに母手作りの干した魚の骨をよく食べていたからかもしれません。

 そのおかげか、歯が丈夫で全て自分の歯。今も小魚なら頭からぽりぽり食べます。歯医者から「硬い物を食べないように」と言われていますが、やわらかい物は食べ応えがないので、つい煎餅やナッツ類を食べてしまいます。

 料理上手の母は戦後、教室を開きました。私も手伝わされているうちに料理を覚え、同じ教室を構えたことがあります。自分で作って家で食べるのが一番おいしいと思います。

 精神対話士を目指した時期もあります。心に痛みを感じる人に寄り添い、温かな対話を通して精神的な支援をする専門職です。

 夫は生前、保護司や家庭裁判所の委員をしていました。障害者を多く雇ったこともあり、相談を受けることも多い。住まいを「相談所」と呼ぶ人もいました。そんな暮らしから精神対話士の資格を取ろうと思ったのです。

 でもよく考えると資格を取らなくても、仕事や普段の生活で行っていることと気付きました。それからは、障害のある子どもたちのよき相談相手になれるよう勉強しています。

 人に必要にされることは自分のためでもあります。だから相手の気持ちをくみ取り、共に助け合うことが大切なのだと思います。そのために焦らず、諦めず、温かく、明るく接しようと心掛けています。