「バラ」を富岡の名産に 栽培施設、ツツジと桜に肩を並べたい

 
初出荷に向け準備を進める山本社長(右)

 バラを古里を代表する第3の花に―。富岡町の有志が運営するバラ栽培施設「夜の森ローズガーデン」で、4月の初出荷に向けた作業が本格化している。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から3月で丸10年。節目の春に合わせ、JR夜ノ森駅構内を彩る町の花・ツツジと夜の森地区の桜並木に続き、バラを新たな名花に育てる取り組みが動きだす。

 夜の森ローズガーデンは、地元有志らが2019年2月に株式会社として設立。震災と原発事故で大きな被害を受けた町内を優雅に彩り住民の心を癒やそうと、バラの栽培を決めた。同町上手岡字下千里の休耕田を活用して水耕栽培のハウスを整備し、昨年12月に苗を植え付けした。

 現在、約千平方メートルのハウスでは、鮮やかなオレンジ色のマドリードや明るい黄色が特徴のゴールドラッシュなど5品種約6600本を栽培している。いずれも市場で人気が高く、病気に強いという。

 社長の山本育男さん(62)と智子さん(62)夫妻が中心となり、バラ栽培専門家の末松優さん(67)=埼玉県=から定期的に技術指導を受けて品質を高めている。4月にいわき市などに出荷するほか、ローズガーデンで直売する予定。

 「心を和ませ、笑顔にすることを改めて実感した」。智子さんは、バラを手にした町民の笑顔が忘れられない。

 昨年12月のクリスマスに合わせ、山本さん夫妻は帰還した家庭に花を届けたいと他産地から仕入れたバラを町内で販売した。購入に訪れた住民からは「富岡でバラが買える日が来るなんて」と感激の声が相次いで寄せられたという。山本さん夫妻はバラの産地化を進めることが地域を明るくする力になると確信した。

 ハウス内で栽培するバラはつぼみの段階で出荷するため、夫妻は今後、観光客や住民に花を咲かせた美しい姿を見てもらおうと、ハウス周辺でも栽培する構想を描く。山本社長は「年間を通じてバラを栽培し身近な存在にしたい。ツツジと桜のシーズン以外にも、いつでも花が咲いている古里が町民の心のよりどころとなれば」と願う。

 バラに関する問い合わせは同社ホームページ(https://r.goope.jp/yonomorirose/)から。