三菱電機郡山工場、全壊被害から再生 生産規模、従業員も倍増

 
通信機器や映像監視システムを製造している郡山工場

 東日本大震災から10年の節目を迎えるのを前に、三菱電機は26日、震災で生産棟が全壊する被害を受けたコミュニケーション・ネットワーク製作所郡山工場(郡山市)を福島民友新聞社に公開した。この10年で、需要拡大が見込まれる光通信や無線通信機器、映像監視システムの生産規模を約2倍に増強し、従業員も地元を中心に倍増した。

 郡山工場は1943(昭和18)年、三菱電機の7番目の工場として設立された東北唯一の生産拠点。現在は、国内事業者に提供する光通信や無線通信などの通信機器、店舗やマンション、河川、道路などで使う映像監視システムを製造している。

 同工場は震災で四つあった生産棟が全壊。約2カ月後、唯一無事だった食堂の一角を活用して操業を再開した。限られたスペースで工夫しながら作業した経験を生かし、約1年後の2012年5月、被災した4生産棟の機能を集約した生産棟を新設。18年10月には、今後の需要拡大を見込んで生産棟を増設し、生産規模を約2倍に増強した。併せて、工場内にIoT(モノのインターネット)技術を導入し、生産効率化や品質向上に向けた課題を「見える化」して改善につなげる仕組みを構築した。

 これに伴い、12年3月に270人だった従業員は現在540人と倍増。この大半が地元雇用で、本県の産業復興に大きく貢献している。

 震災を教訓とした現在の生産棟は耐震性にも優れ、本県沖を震源とする13日深夜の地震でも、生産ラインを止めることなく稼働できたという。

 福田圭一工場長(54)は「新型コロナウイルスの影響もあり、映像監視システムや通信機器の需要はさらに高まると考えている。今後も地域に根差した企業として、社会課題を解決するための製品を作っていく」と決意を示した。